工房

 工房には若い弟子が働いています。塗り部門と木地部門があります。木地師は西村直木さんだけしか京塗りのロクロを挽ける人がいませんでしたから、木地師を育成するのは悲願でした。直木さんのご指導もあって、木地部門もようやく軌道に乗ってきました。何より木地も塗りも京都(当工房)でやってこそ、「京塗り」「京漆器」と言えるのではないかと考えています。漆器は分業制なので難しい部分がありますが、当工房ではお互いに顔の見える環境の中で働くことで、より一体感が生まれるようになりました。

 最初は弟子の技術向上のために始めた数仕事でしたが、「天雲」という今の時代の暮らしに合う器を生み出しました。そしてかつて江戸時代に、京都で作られていたという「アサギ椀」の復興プロジェクトも完遂し、この2つのブランドが走り出しました。また当工房の趣旨に賛同くださった企業との協働で生まれた椀「烏丸」などもあります。

 特に「アサギ椀」の復興プロジェクトでは、京北で漆の木を植えたり、大原の地に植林をしたり、ただ漆器を作るだけでなく、自然を畏れ、リスペクトしながら共に生きていく喜びを感じることができました。人間も自然の中の一部です。この循環を自分の手で確かめながら、次の世代にこの漆の文化と漆のある暮らしをバトンタッチしたいと思います。

工房
工房
工房
工房
工房
工房
工房
木地
木地
完成した時に、厚みを2mm以内にしようとすると、どうしても薄い木地が必要になる。棗の木地は底から口までの外側のラインに沿って均一な厚みである事が鉄則で、この技術が当工房のものづくりにおける全ての基本になっている。